母
実家に行った時に、母と話していたら、
「○○おばさんが、だいぶ弱ってきた。」と言った。
母にとっては、義姉である。
私は、おばとはもうずいぶん会っていない。
おばは、若い頃は恰幅がよく、大人し~いご主人の前にいつも立ちはだかり、
ガハハと笑って、元気に明るく家を切り回している印象のおばさんだ。
「昔は男勝りで、サバサバしとるように見えたけど、
ああ見えて、内面はえらい繊細な人だったんだわ~。」と、母は言った。
年を取り、足腰も弱り、だいぶ痩せたそうで、
時々電話をかけてきては、泣き言を言ったりするのだそうだ。
私が、「別にいいじゃん。」というと、
母は、「いかん!もっと前向きでおらな!」と言った。
「メソメソ、グチグチして。後ろ向きな事言ったって、何もはじまらんワ!」
「特に病気してるわけじゃないんだから、もっといろんな事に感謝して生きな!」と。
...。
「いろんな事に感謝...」その言葉、そのままアンタに返したるわ!と心の中で思った。
「でもさ~、案外悩んだりしてるほうが頭使って、ボケなかったりするんじゃない?
ちょっとくらい神経質のが脳にはいいんだって!」
と言ってやった。
伯母は、まだ頭は全くしっかりしているそうだ。
だが母は、「そんなもんかね。」等と思うタマではない。
これ以上は、どこまで行っても平行線なので、
もう止めた。
母からは弱音らしいものを聞いた事がない。
何だか、自分が正しいと思っている事は、絶対だと思っているようだ。
たとえその事で、多くの人を傷つけることになろうとも
容赦のないところがある。
私は、母と性格が全く違うため、
母の気持ちが全く分からない。
多分、母も私の事が全く分からなかっただろう。
それでも若い頃は、母にすごく認めてもらいたいと思っていたし、
母の考えてる事や、本当の気持ちを知りたいと思っていた。
今は、母と分かりあう事は完全にあきらめている。
私たちはどこまで行っても平行線だった。
私達が上手く行く方法が、一つだけあった。
それは、どこまでも私が母の話に調子を合わせる事だ。
でも、それは私にとっては、何の解決にもならないという事も分かっていた。
だから、私はもう母と分かり合うことをあきらめた。
つづく...